2012年04月11日

1986年の残照 令嬢 18

 人が会場内にもかなり増え、騒がしくなってきていた。すぐ隣にいる者の声も聞き取りにくくなっていた。
「今晩は何をするつもりなんだろうな」早坂は笙院に訊いた。
「そうですね、まずチェス大会は無いでしょうね。ルーレットが登場しそうな雰囲気はありますが……」早坂の睨むような視線を受けて笙院は弁解するように言った。「いえ、もちろん賭けごとは無しです。普段ですと、講演会や慈善活動の紹介、ボランティアの表彰などがあるんですがね。犯罪心理学や刑法の専門家が講演することもありますね。でも、今日は演壇がありませんからね」
「ボランティアの表彰ってのは?」
「早苗お嬢さんが手掛けてる慈善事業に協力してくれたボランティアの方を称えて表彰するんです。防犯キャンペーンで街頭でチラシを配って頑張ってくれた人などに感謝の気持ちを込めて贈り物をするんですよね」
「ああ、そう」早坂は素っ気なかった。
「今晩はこのまま飲んで食べて終わりですかね」
 そのとき早坂は後に艶めかしい空気を感じた。肩まで垂らした髪の女性が後ろから顔を覗かせた。



posted by 論虚空 at 07:41| 1986年の残照 5章 令嬢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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